定年生活の計画表を作ろう
定年後の「ライフプラン」はお金ではなく「時間」で考える
定年後に豊かな生活を送るために、計画(プラン)が必要なのは言うまでもありません。
世間ではよく、FP(ファイナンシャルプランナー)などが「エクセルでライフプランシートを作り、退職金や年金、子供の結婚資金などの数字を入力して将来をシミュレーションしましょう」と勧めます。しかし、私がここで提案したい計画表は、そうしたお金の計算書ではありません。
私がおすすめするのは、お金の数字という「ノイズ」をあえてすべて排除し、自分の人生の残り時間を俯瞰するための年表です。「いつ仕事を辞めるか」「パートナーの状況はどうか」「男女それぞれの健康寿命はいつか」といった人生の重要な節目だけを記入し、時間を可視化するのです。
この「節目」を念頭に置いているかどうかで、これからの過ごし方は劇的に変わります。
たとえば、一つの基準となる「健康寿命」は、男性が約72.5歳、女性が約75.5歳です。この数字が頭に入っていれば、男性なら「遠出を伴う海外旅行は72歳あたりまでに済ませておこう」と考えられますし、「どうしてもクルーズで世界一周をしたい」と思うなら、リタイアの時期を少し早めるという選択肢も見えてきます。
60歳でリタイアした場合、健康に動ける時間はあと12年。これが65歳リタイアなら、わずか7年しかありません。こうして可視化してみると、私たちの残された時間は「意外と少ない」ことに気づくはずです。
だからこそ、人生の残り時間を意識し、そこから「逆算」して自分のやりたいことをスマートに片付けていく――そんな時間軸の視点が、これからの生活には絶対に欠かせないのです。
人生の節目を可視化して「心地よいズレ」をアップデートする
では、残り時間を逆算するための計画表には、どのような節目を書き込むべきでしょうか。私が網羅しておくべきだと考える主な項目は、以下の通りです。
自分とパートナーの定年退職 / 退職金の受取時期
自分とパートナーの年金受給開始時期
子供の独立 / 子供の結婚
双方の親の平均寿命(相続のタイミング)
自宅の住み替え / リフォームの時期
自分とパートナーの健康寿命 / 平均寿命
「85歳で約6割が要介護状態になる」という現実の目安
これらをパッと一目で分かるように書き込んだ計画表をつくり、時々チェックしながら日々の生活の舵取りをしていきます。
ただし、この計画表を運用する上で、一つだけ考慮しておきたい楽しいポイントがあります。それは、最近の医学や栄養事情の目覚ましい向上によって、この計画に「嬉しいズレ」が生じやすいということです。
私の知人に、会社の先輩からこんなアドバイスをもらった人がいます。
「自分がモデルにしたいと思う先輩を何人かウォッチしておきなさい。何歳まで旅行に行けているか、外食を楽しめているか、飲みに行けているかを観察すると、自分の老後がイメージしやすいよ」
彼は20年ほど前、当時の先輩たちを見て「外に楽しく飲みに行けるのは65歳くらいまでかな」と思っていたそうです。ところが最近の先輩たちを見ていると、驚いたことに75歳を過ぎてもみんな平気で元気に外で飲んでいるのです。つまり、20年前の常識から「10年ものズレ」が生じているわけです。
これは嬉しい誤算ですが、もし「75歳以降の飲み代」を計画から外してしまっていたら、76歳になったときに資金不足で飲みに行けなくなり、寂しい思いをすることになります。ですから、時代に合わせて計画をスマートにアップデートしていく柔軟性も必要なのです。
計画というものは、多少外れることがあっても、人生のロードマップとしてイメージを持っておくことに大きな価値があります。
むしろ私たちは、この計画表に書いた限界の数値を良い意味で裏切り、「外れることを目指して」日々をハツラツと精進していきたいものです。
